(芭蕉布のハギレ)
自然布は、草の茎の皮や、木の皮から採った靱皮(じんぴ)繊維を用いた布を指します。
(自然布の糸は、緯糸のみに用いる場合と、経糸・緯糸共に用いる場合があります。)
自然布は、草木布(そうもくふ)、原始布(げんしふ)とも言われますが、
名称が異なるだけで、同じ布たちを指しており、
ここでは、自然布の名称を用いたいと思います。
日本の自然布の種類には、
科布、藤布、葛布、楮布、太布、紙布、芭蕉布、
などがあります。
いずれも素材から繊維を採り、長い糸とするまでに、
長い長い時間と、大変な手間を要します。
野良着や袴、風呂敷や袋など、様々な用途と形態で、
生活の中で用いられてきた自然布ですが、
時代が変化するにつれ、その姿は昔のように見られることはなくなりました。
今ではほとんどの自然布は、わずかに産地や保存会で作られる限りとなりましたが、
素材によっては、産地以外の場所で試作されたり、
現代の作家が糸作りから取り組み、用いている場合もあります。
時間と手間を要する仕事に、それでも取り組み続ける理由は、
素材の魅力か、どこにあるのでしょうか。
自然布は、日本の布の魅力と既に出会われた方々にとって、
よく知られた存在かもしれません。
教草で記す事柄程度では、
上級者の方々には物足りないものになると思いますが、
初歩のお話を記していきます。
かつては日本の広い範囲で作られ、
衣食住の一部に在った日本の布の姿を、
少しずつでも、垣間見ていければと思います。