裏側
江戸の小袖裂。
この一枚の端切れに、当時の小袖に用いられていた染織技法を、
幾つか垣間見る事ができます。
もともとは真っ白だったはずの、絹の綸子(りんず)地に、
ふっくらした絹糸の刺繍と摺ひっ田、墨を併用して文様を表しています。
技法の組み合わせ方や、そこから生まれる強弱とした表現に、
いわゆる 日本的な美意識と呼ばれるものが活きているのを、
眺めながら ひしひしと感じる一枚です。
が、昨今、以前に比べると価格が落ちているようです。
叩き売る位なら、非売品にしたいのですが……
それを実行していたら、麻も型染めも、殆どの品が非売扱いとなり、
あっという間に破綻してしまうのが、悩ましい所です。
(この一枚位なら、きっと堪えられるのですが……)まずは
不当に高くなく、裂にも失礼でない値段を付けて
露店に並べます。
裏側にも美しさを感じるのは何故でしょう。
刺繍や染織の参考にもなる一品。
※裏側に一ヶ所当て布が付いています。
江戸 おそらく中期頃
幅 約28cm
たて 約23cm
参考:鐘紡コレクション1 小袖一 (昭和62年 毎日新聞社)