最近、縫い目を解いている晒布(さらしふ)の帷子(かたびら:夏の衣、
又は着物の下などに着た衣で、素材は苧麻、大麻、生絹いずれかの単仕立て)。
着物の形をほどき、布地が次の役へと繋がればと作業にとりかかりましたが、
縫い目を解くことをためらう程、細やかに仕立てられています。
この生地をよく見ると、経糸、緯糸ともに手績み(てうみ:人の手で、
原料である長い植物繊維をつなげていき、糸を作ること。
原料が木綿などの短繊維の場合には、績む〈うむ〉とは言わず、
紡ぐ〈つむぐ〉と言う。) の苧麻、もしくは大麻、の糸から成ることがわかりました。
時代は江戸から明治大正のもの。織り上げた生成りの布地を、
洗ったり天日に干したりして、柔らかく真っ白に晒した曝布(さらしふ)と呼ばれる布です。
当時の曝布は『絹の生地のように細緻』と江戸時代(1700年代)の書物にも記されています。
現代では薄く軽やかで、真っ白な苧麻(ラミー)の布地を、
紡績糸の機械織で安価に手にすることが出来るため、
白い麻の生地は、さほど珍しいものではないかもしれません。
ただ、人の手作業だけで極細の糸を績み、織り上げ、
人と自然の力だけで白く晒された布地は、それらとは全く異なる風合いを持っているように感じます。
古いものの美、として眺めるだけでなく、上質な(過去の)日本の手仕事として、
もっと対峙していきたいと感じる染織品のひとつです。